論文「Diversity-Oriented Two-step Annulative π-Extension Enables Access to Structurally Complex Nanographenes」がAngewandte Chemie International Edition誌に掲載されました(論文へのリンク)。

Diversity-Oriented Two-step Annulative π-Extension Enables Access to Structurally Complex Nanographenes
Honami Katsuragawa, Yoshifumi Toyama, Shota Mikawa, Kou P. Kawahara, Hideto Ito, Kenichiro Itami
Angew. Chem. Int. Ed. 2026, 65, Early View.
DOI: 10.1002/anie.2205198
イメージ図と紹介動画は理化学研究所 高橋一誠氏により作成
未修飾多環芳香族炭化水素(PAH)から、多様で複雑なナノグラフェンをわずか二段階で合成する新手法を開発しました。未修飾PAHにさまざまな構造のナフタレン骨格をパラジウム触媒で直接つないだ後、酸化的に環を閉じる「二段階縮環π拡張(APEX)法」を確立しました。従来のAPEX法では、利用できるπ拡張剤が限られ、合成可能なナノグラフェンの構造多様性に制約がありました。本手法では、立体的に混み合った芳香環部位も導入でき、8~10個の環が縮環した平面型および湾曲型ナノグラフェンを合成できました。特に、五員環・六員環・七員環が組み合わさった、負の曲率をもつ大きく湾曲したナノグラフェンの創製に成功し、その立体構造、芳香族性、吸収・発光特性を明らかにしました。
本成果は、従来法では到達が難しかったナノグラフェンの構造空間を大きく広げ、構造に由来する未知の光・電子機能を探索するための新たな合成基盤となるものです。本手法は既知化合物の効率的合成にとどまらず、未踏の炭素骨格や物性を発見する「探索型合成」の手段としても有用です。今後、環の数やつながり方、分子の曲率と、吸収・発光、酸化還元、電荷輸送、分子集合などの性質との関係を体系化することで、目的とする機能から逆算したナノグラフェン設計につながります。将来的には、有機半導体、発光材料、光センサー、太陽電池をはじめとするエネルギー変換材料などに適した分子の探索を加速し、原子レベルで構造を制御した次世代炭素材料の開発に貢献すると期待されます。さらに、計算化学やデータ科学と組み合わせることで、膨大な候補構造の中から有望な分子を効率よく選び出し、合成・物性評価へつなげる展開も期待されます(プレスリリースへのリンク)。
桂川さんをはじめ、チームの皆さん、おめでとうございます!


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