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C-H Arylation of Phenanthrene with Trimethylphenylsilane by Pd/o-Chloranil Catalysis: Computational Studies on the Mechanism, Regioselectivity, and Role of o-Chloranil

Mari Shibata, Hideto Ito,* Kenichiro Itami*
J. Am. Chem. Soc. 2018, 140, 2196–2205. DOI: 10.1021/jacs.7b11260

これまで我々はパラジウム触媒、オルトクロラニルを用いた多環芳香族炭化水素(PAH)のC–H結合直接アリール化や縮環π拡張反応(APEX反応)を報告している。本触媒反応はオルトクロラニルの添加が必須であり、アリールトリメチルシランやジベンゾシロールといった有機ケイ素化合物がアリール化剤・π拡張剤として働く非常に珍しい反応系でるが、詳細なC–H結合直接アリール化の反応機構、オルトクロラニルの役割、高い位置選択性発現の理由などは不明なままであった。
今回我々は、実験と量子化学計算によってフェナントレン/フェニルトリメチルシランを用いたモデル反応におけるC-H結合直接アリール化の反応機構の解明に成功した。本反応において、まずカチオン性パラジウムにオルトクロラニルが配位することによって非常に電子不足な金属種が生じ、フェニルトリメチルシランとの効率的なトランスメタル化反応を起こすことがわかった。生じた電子不足フェニルパラジウム錯体はフェナントレンのK領域に選択的に配位し、14.3 kcal/molの活性化障壁をともなってカルボパラジウム化が起こり、脱プロトン化、脱パラジウム化を伴ってフェニルフェナントレンが得られることを見出した。
本研究は配向基をもたない不活性なPAHの直接アリール化反応における初めての機構解明研究であり、今後我々が中心に研究を進めているPAHの官能基化やAPEX反応によるナノグラフェン合成研究の進展にも大いに貢献しうると考えられる。

(ごく最近、本研究で得られた知見を生かし、これまで困難であったアリールトリメチルシラン類のホモカップリング反応にも成功している:Mari Shibata, Hideto Ito,* Kenichiro Itami* Chem. Lett. 201746, 1701–1704. DOI: 10.1246/cl.170723.)。

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